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平成18年度 青年部視察研修報告

はじめに

昨今、廃棄物や未利用資源等の循環的活用が重要な課題となってきており、国の3R政策に呼応した事業化が各地で進められています。このような背景を踏まえ、火力発電所で発生する石炭灰や廃ガラスの再資源化事業を進めている沖縄県の施設を研修先として選定いたしました。合わせて、 日本環境保全協会青年部推進協議会にも提案させていただき「第6回青年部事業推進協議会・リサイクル施設視察」として実施し、全国より38名の参加をいただきました。

日程:平成19年2月22日(木)〜25日(日)、視察参加者:28名、交流会参加者38名

l . 視察先

1. 沖縄電力株式会社金武火力発電所

①産業廃棄物の3R推進強化

事業活動で発生する産業廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)の3Rを推進し、最終処分量をゼロに近づけるゼロエミッションへの取り組みを行っている。

(1)発生抑制(Reduse)

亜瀝青炭の導入による石炭灰・石こうの発生量低減
一般炭より発熱量で2割程度劣るものの、灰分で1/10、硫黄分で1/4程度となる亜瀝青炭を導入することにより、灰処分場の延命化、排煙処理の低減を図っている。

(2)再使用(Reuse)

電力量計の再使用
計量法により使用期限が定められている電力量計を、点検・修理を行い検定を受けた後に再使用している。
設備の長寿命化
設備の合理的延命化を進めるために、的確な余寿命診断技術を活用し、有効な修理・交換等を実施している。

(3)再生利用(Recycle)

撤去資材の再資源化
自社設備から撤去されたコンクリート柱、電線等を可能な限り自社にて再利用をしている。また、木製電線ドラムも回収している。
石炭灰・石こうの再資源化(頑丈土(がんじゅうど)破砕材)
火力発電所から発生する石炭灰とセメントに水と添加剤を混合し再生したもの。これは土砂代替材として建設工事で使用されている。
頑丈土破砕材は、関連会社に中間処理として処理を委託し、450円/m3で製造販売されている。これは同等代替材と比べても安価であるが、販売を主目的としているものではなく、利用しやすさを念頭にしているためということである。

フロー図

プラント全景

製品

② 一般廃棄物の3R推進強化

産業廃棄物に限らず、オフィスごみ等一般廃棄物についても、ペーパーレス化や古紙のリサイクルによるトイレットペーパーの再生・利用(自社生協による販売)、マイカップ運動など、3Rを推進している。

沖縄電力の取り組みは、1996年より毎年「環境行動レポート」として発行されている。

質疑応答

問1)廃棄物として灰等の受け入れを行っているか?
答1)木質バイオマスの受け入れについては検討はしているが、実際には自社分の処理のみである。
問2)発電割合は?
答2) 火力66億kw、風力500万kw、太陽光5万kw
問3)コストパフォーマンスは?
答3) 台風の影響により風力発電設備の倒壊などの被害もあり、コストは一概に比較できないが、自然エネルギーを利用するほうが安価であるとは思われる。

l l .株式会社トリム

①概要

従来のガラスリサイクル装置は、ガラスを破砕しカレット状にするものがほとんどであり、透明・茶以外のガラスは舗装材に混ぜたりなどに使用されているが、製品としての付加価値は低い。しかし、(株)トリムの廃ガラス再資源化プラントにおいて製造されるスーパーソルは、土木分野での軽量盛土材、園芸・農業分野での人工培地・無機質土壌改良剤、水処理分野での水質浄化材など幅広い用途があり、各分野で多数使用されている。

株式会社トリムは、実際にガラスの処理を行っているが、設備販売・事業提案を含むプラントメーカーでもあり、装置の中には特許をもつものもある。

設備概要

②スーパーソルの製造工程

工程は、パンを作る工程に似ている。あらかじめ不適物(金属、板ガラス、鏡、セト等)を取り除き、4.5m3ストックできる原料ホッパーより供給された廃ガラスを破砕機にて6mm以下に破砕しカレットとなる。この破砕機は、臼の原理を応用したローラー回転式で圧縮破砕となっており、特殊鋼・脱着式カップリングなどが使用され、破砕磨耗率・耐久度が向上した構造となっている。カレットはアルミナボールを利用した粉砕機(ボールミル)に投入されガラス粉体となる(メディアン粒径35μm)。ガラス粉体は、全閉式の振動ふるい機で粒度選別され、ここでプラスチック・ラベルなどが取り除かれる。粉体は、渦巻きの原理を応用したスピンフローコンベアで混合撹拌機に移送され、ここで紛体と2種類の添加剤(0.5%程度)を自動計量で混合する。混合紛体はワイヤーメッシュベルトコンベアによる連続焼成炉(700〜920℃)にて多孔質軽量発泡資材(スーパーソル)となる。添加剤や焼成炉の温度を調節することにより質の違うスーパーソルを作ることが可能である。最終工程として、加工粒度調整装置により破砕し、用途に応じた規定粒度に選別し製品となる。

通常、作業員は1名で、工程は乾式で全自動である。運転は24時間可能であるが、現施設の処理は8時間で5t/日程度。設備費は1億6,500万円(事業提案含む)。

ビンの処理は有償(容器包装リサイクル法)で、カレットの場合、原料1t受入れてカレット1t生産となるが、スーパーソルの場合、1t受入れて数m3生産・販売する。目的により比重を変えるため膨らみ分は明言できないが、その膨らみ分が利益となる。

燃料としてA重油を使っているためコストはかかるが、ガスにすると危険性が高くなるため使用していない。

粉体

焼成後

屋上緑化プランター

スーパーソルの特徴

(1) 土壌還元
ガラスは土壌成分からできているため、スーパーソルも土と同様にみなされる。よって、廃棄物の適用をうけない。有害物質の溶出もなく、腐食もない。
(2)燃えない
無機鉱物性で、耐火性である。
(3)軽量
用途に応じて比重のコントロールができる。(0.3程度〜1.6程度)
(4)施工性がよい
軽量なので取り扱いが容易で、多少の降雨でも作業が可能。養生期間も必要ない
(5)透水性と保水性
締固め時でも水はけがよく、透水性・保水性・通気性に優れ草木などの生長を促進させる。

スーパーソルの使用・導入例

土木 軽量盛土、暗渠排水資材、地下構造物の土圧軽減材
建設 軽量断熱骨材、人口大理石
緑化 土壌改良、屋上緑化、酸素管、軟弱地盤改良材、
ハイドロカルチャー(大規模屋内観賞用植物の育成)資材
農業 暗渠排水資材、マルチング資材、人口土壌資材
浄化 水質浄化資材、雨水活用資材、家畜ふん尿浄化材、
EM菌複合素材を研究中

lll . おわりに

沖縄電力

沖縄電力の取り組みは、「環境行動レポート」として公開されている。経営方針において環境問題を経営の重点的に取り込む事項の一つとし、環境活動に積極的に取り組み地域社会との交流も活発である。

株式会社トリム

スーパーソルの利用価値には非常に興味深いものがある。参加者からも再資源化プラントの導入を含めた検討をしていくとの声が多数聞かれた。

交流会

はじめに、各県(宮崎、長崎、島根、静岡、宮城、北海道、沖縄)より、(一)市町村合併により従来随契であったものが入札となる状況、(二)下水道化に対応する合特法の取り扱い、(三)合特法を知らない役所担当への対応、(四)協業化の必要性、などの状況報告がありました。

阿久津専務からは、(一)会員の勉強会の必要性、(二)第1回「事業発展開拓研修会」の概要、(三)法改正(食品リサイクル法のリサイクルループの考え方、プラスチック製容器包装の取り扱い、木くず等一般廃棄物の区分の見直し)等に関するお話がありました。

その後、長崎県の上野会長の音頭により交流会を開催し、各県相互の交流を深めました。

今回の視察研修にあたり、阿久津専務、曽根川事務局長さんには、準備の段階から当日の工程全般にわたり大変お世話になりました。また、視察先で対応していただいた、沖縄電力環境室大城係長様、垣花様、発電管理課宮平係長様、岡本様、株式会社トリム玉那覇室長様、比嘉工場長様ほか、職員の方々、日本環境保全協会沖縄県支部連合会古波蔵会長はじめ理事・会員の皆様に心より感謝申し上げます。

参加者:
北海道6名、宮城県3名、静岡県1名、島根県3名、長崎県7名、 宮崎県6名、沖縄県10名、
事務局2名 計38名

皆様、ありがとうございました。