はじめに
青年部が発足して以来、昨年まで国内研修会・勉強会及び各地青年部との交流等を行って見聞を広めてまいりましたが、発足10周年を記念して9月に海外研修を企画しました。
目的地としては、日本と生活習慣が最も似ている国ということで検討した結果、「韓国」に決定しました。韓国は、隣の身近な国で観光には行きやすい所でありながら、廃棄物の情勢をほとんど知らないのが現状で日本より進んでいるのか遅れているのかも知らない状況です。見聞を広める意味でも直に行政を訪問しようとソウルJC(青年会議所)メンバーに協力を依頼し計画が立てられました。
日程は、季節がらできるだけ仕事に影響を与えないように祭日を2日利用しウィークデーは2日に抑える工程の4日間で実施しました。
※視察日程 平成16年9月20日〜平成16年9月23日
韓国(ソウル)の概要
"韓国の人口は、約4,000万人と言われ、その内ソウル市行政区域には、国の1/4の1,031万人359万"世帯が住んでおり、ソウル市内人口密度は、東京都同様で人があふれ、車の渋滞が日常起きています。
ソウル市は、25の自治区と522の洞(日本の町)に分かれていて、各自治区は、市の管理の下で自治行政機能を担当し自主的(独立して)に管理しているようです。また、区庁長は住民の直接選挙によって選出されているようです。
自治区の行政組織は、区庁長、副区庁長の傘下に局、室、課などと保健所等で構成されています。
視察先
1.芦原区(Nowon-gu)役所訪問
区役所で出迎えてくれたウォルゲJC(ソウル青年会議所)メンバーと共に区議長室を訪問した。
区議長室では、李区議長・林区議員等が対応してくれて、名刺交換・自己紹介に続き、久保部長より今回の視察の目的について説明が行われた。
引き続き、李区議長より、芦原区(Nowon-gu)について説明をして頂いた後、廃棄物情勢について質疑応答を行った。
・李区議長
「芦原区(Nowon-gu)は、ソウル市の北東にある区で人口約65万人・面積35Km2・24の洞(町)からなるソウル市で2番目に大きい自治区で85%の面積を住宅・マンション等で占めています。
区の周囲は、Surak山・Pulam山が取り囲む自然環境がゆたかな場所です。
ソウル市では、河川からの悪臭等を改善する為、現在の河川敷内道路を除去し、川を昔の状態に戻そうとする計画が進められています。
私たち議員は、環境保全と市民の豊かな生活が向上する事を目指して活動しています。韓国の状況を十分把握してお帰り下さい。
また、JC(青年会議所)との関係も今後とも良好で親善を図れるようにお願いします。
ごみ処理・リサイクル施設への詳しい説明は、Kim氏より致します。」
・Kim氏
「芦原区では、1993年ゴミ資源回収施設(ゴミ焼却炉)を建設する計画を立てた際、日本に視察に行きゴミ処理状況を見てまいりました。
当時の日本での施設建設の考え方は、間違いではないかと思いました。理由は、ゴミの分別がなされておらず全てを焼却処理している為、施設が不足している状態でした。
視察後、芦原区では、当初考えていた焼却施設建設規模を400t4基から400t2基に変更しゴミの分別を徹底しリサイクルを行うことで減量化を進めました。
現在は、400t1基のみを稼動し1日300tの処理を行っています。
施設の処理能力は、十分余裕はありますが、芦原区(Nowon-gu)では住民が区域外からのゴミ受入を反対している為、現在処理はできません。」
※質疑応答内容
- ・芦原区(Nowon-gu)では、ゴミを何種類に分別していますか?
- 「紙くず・厨芥類・プラスチック類・ビン・缶・ペットボトル・大型ゴミ(家電等)に分別しています。」
「ゴミ資源回収施設(ゴミ焼却炉)では、紙くず類のみを受入れており、厨芥類・プラスチック類・ビン・缶・ペットボトルは、区から許可を受けた業者が回収してリサイクルを行っております。」
「大型ゴミは、別途申し込みし回収に伺う様になっています。」 - ・芦原区(Nowon-gu)では、家庭ゴミ以外に事業系のゴミも受入していますか?
- 「家庭ゴミしか受けておりません。事業系のゴミは、区から許可を受けた業者が回収しています。」
- ・家庭ゴミの回収は、無料ですか?
- 「20L当たり30円位かかります。透明のビニール袋(プリペード袋)を品目別に色分けして販売しています。」
- ・家庭から出る不燃ゴミは、埋立地に入れているのですか?
- 「区では、不燃ゴミは、回収していません。また、埋立地には、焼却灰しか埋めません。」
- ・許可業者が回収したプラスチック類は、最終的にはどうなるのですか?
- 「プラスチック製品工場等に持ち込まれ原料の一部として自転車等のフレームなどに加工されリサイクルしています。」
- ・ゴミ収集は、何時どのような車で回収するのですか?
- 「夜の12時以降から行います。車は、日本と同様のパッカー車を使用しています。」
「曜日によって回収品目を分けていますので大型トラックを使用する日もあります。」 - ・どうして夜間に回収するのですか?
- 「日中は、車の渋滞が非常に多い為、効率が悪くなります。」
- ・韓国では、ゴミを散らかすなどカラスによる被害は、ありませんか?
- 「韓国では、カラスによる被害はほとんどありませんが、猪による農作物を荒らす被害が多く発生します。」
「猪を狩る狩猟には、国の許可が必要になります。」 - ・家庭ゴミの回収場所は、決まっていますか?
- 「日本と同じようにゴミスティーションやマンションのゴミ集積所から回収します。」
- ・ゴミ収集は、区の直営車両ですか?
- 「委託車両と直営車両の半々ぐらいです。」
区役所本会議室にて記念撮影
2.Nowon資源回収施設(ゴミ焼却炉)見学
入場者記名簿に署名し施設フロー等概要説明を工場長より受けた後、施設を見学し見学後、プレゼン室に戻り質疑応答を行いました。
※施設の規模
敷地面積 | 建築面積 | 焼却能力 | 焼却形式 |
---|---|---|---|
46,307m2 | 29,035m2 | 400t/日×2基 | ストーカー型 |
※質疑応答内容
- ・Nowon資源回収施設(ゴミ焼却炉)は、区から民間に委託され稼動していると聞きましたが何人で管理しているのですか?
- 「全員で43名で4交替制で運転しております。」
- ・施設から発生するエネルギーは、どのように利用されていますか?
- 「近郊の団地の給湯暖房や温水プール等に供給しています。また、蒸気を利用した発電を行っております。」
- ・燃やしているゴミのエネルギーは、どの位ですか?
- 「ゴミ4tで重油1kL相当あります。」
- ・ソウル市内には、焼却施設はどの位ありますか?
- "「ソウル市内には29施設の焼却炉があります。規模は、50t/日〜1,200t/日(300t/日×4基)"です。」
「焼却施設を持たない区は、今でも埋立地にゴミを運んでいます。」
「現在、ソウル市では区地域以外のゴミ移動は禁止されていますが、焼却炉を持っていない自治区どうし3区が共同で一つの焼却施設を建設中です。」 - ・焼却炉メーカーは、どこですか?
- 「Nowon資源回収施設(ゴミ焼却炉)は、韓国Seghers社とベルギーSeghers社との共同施工です。」
「韓国では、外国メーカーだけで施工することは、考えていません。」 - ・市民が施設に入ってくるゴミを監視していると聞きましたがどのように監視しているのですか?
- 「Nowon-guに1年以上住んでいる住民が住民対策委員会に申し込みを行い審査の上、3ヶ月間の契約を交わし住民代表の監視役として24時間3交替で勤務します。賃金は、区が支払います。」
「監視だけの業務で監視役申し込みが無ければ勤務の継続も可能です。」 - ・市民が自ら自家用車等でゴミを施設に持ち込むことは、可能ですか?
- 「区の許可を取れば可能ですが審査がありますので今まで持ち込んだケースはありません。」
- ・焼却灰のリサイクルは、行っていないのですか?
- 「ソウル市民は、焼却灰に対し悪いイメージをもっていますので溶融して路盤材等に使用することなどに抵抗があります。」
「但し、焼却灰のリサイクル研究は、進めています。」 - ・ダイオキシン等の排ガス規制は、どのようになっていますか?
- 「もちろんあります。」
※排出規制値
名称 | 単位 | 国規制値 | ソウル規制値 | 2003実績値 |
---|---|---|---|---|
ばいじん | ms/sm3 | 80 | 20 | 4.74 |
Sox | ppm | 300 | 20 | 0.95 |
HCL | ppm | 50 | 25 | 1.02 |
Nox | ppm | 200 | 70 | 16.2 |
CO | ppm | 50 | 30 | 11.73 |
F | ppm | 3 | 1.5 | 0.003 |
Hg | ms/sm3 | 5 | 0.05 | ND |
Cd | ms/sm3 | 1 | 0.05 | ND |
As | ppm | 3 | 5 | ND |
Cr | ms/sm3 | 1 | 5 | 0.001 |
Cu | ms/sm3 | 10 | 5 | 0.016 |
Zn | ms/sm3 | 10 | 5 | 0.015 |
Ni | ms/sm3 | 20 | 5 | 0.016 |
ダイオキシン | ng-TEQ/sm3 | 0.1 | 0.1 | 0.067 |
おわりに
今回の視察で、韓国(ソウル市)の廃棄物への取り組み方や現状がある程度把握できとても有意義な研修であったと思われます。
両国の廃棄物に取り組む姿勢で進んでいる点、遅れている点が比較でき参考になった部分も大いにありました。今後も、このような研修を行い見聞することにより仕事に生かしていければ良いと思います。
それと、この海外研修の準備及び3日間の通訳に協力して頂いた久保部長の友人の李さんには大変お世話になり感謝致します。誠にありがとうございました。
ただ、研修参加者が計画当初約20名いたのに仕事の都合により8名に減ってしまった事が誠に残念でした。次回は、多くの人が参加できるよう再度検討する必要があると考えております。
以上
参考ソウル市内で置かれていたプリペード袋